星が降り注ぐ午前2時 ⑥

---最初はただの言い訳作りと時間潰しだった。 周りの同僚からの合コン圧。上司からは縁談の持ち込み。いや、俺そこまでしてもらうほど優秀じゃないし。ていうか仕事にプライベートは持ち込みたくない派なんで会社繋がりのご縁だなんてまじ勘弁。会社関係…

星が降り注ぐ午前2時 ⑤

「昼間の女の子、おまえの友達?」まだ夕方と言っても過言ではない午後6時、彼とこの時間に会うのは初めてだ。 見慣れた車種に、少し緩めたネクタイ。 オンモードの片鱗が見えるほぼオフのナオ。 私を家の近所まで迎えにきてくれた彼の愛車に乗りこんで5分…

星が降り注ぐ午前2時 ④

<シオリ:今日時間ある?><ナオ:今日は厳しい>午前に送ったメッセージへの返事が来たのは13時を過ぎた頃だった。彼と私の関係は年の差があれども基本的に対等だ。敬語もない。車に乗せてもらうときも私は免許を持っていないからガソリン代を渡した。食…

星が降り注ぐ午前2時 ③

あー……目が覚める。ここが自分の部屋であることは間違いない。時刻を確認すれば9時50分。 大学まで徒歩7分という売り文句でこの学生マンションへの入居を決めた。今から支度すれば10時40分からの2限には時間を持て余すくらいには間に合う。 今日は…

星が降り注ぐ午前2時 ②

「なんだぁ?そのブサイクな顔」時刻は22時を回っていた。運転席に座る彼は私服。一度帰宅して着替えてくれたらしい。「今日小テストがあって疲れてるのー。また来週も別の授業に中間試験があるしー」だから、と理由を助手席で車内に流れるBGMを選曲しながら…

星が降り注ぐ午前2時 ①

女としてどうなんだ、っていう行動をしているのは分かっている。自覚している。そこまで堕ちてはいない。けれど、自覚をしているくせにその行動を続けている私は何とも悲しい人間だ。「げっ、今日小テストあるじゃん」グレーのリュックをおろして、ボルドー…

星が降り注ぐ午前2時

暗闇の中に響く布擦れ。聞いたことのない甘ったるい声。荒れる吐息。―――――ああ、今日もか。頭の隅っこでそんな思いがふと現れて、でも、すぐに消しゴムをかける。いいの。これでいいの。けじめをつける日は、もう決めているから。今はこの瞬間を求めるの。体…

彼女のヘッドフォン 【おまけ】

彼は、いつから私をトクベツだと感じていてくれていたのだろうか。 「ひまり、こっち」 「あー!あだっちゃん!!」 季節が巡るのは早いもので、気づけば4年生になっていた。 3月に就職活動も解禁され、学校にいる時間よりも説明会や選考のために企業に赴く…

彼女のヘッドフォン ④【完結】

12月24日。クリスマスイブ。 クリスマスライブ当日。 機材設営から自分たちでやる軽音部。 午前から集合して、午後4時まで好きなだけ演奏する。 そのライブに、カイト先輩は現れなくて。 「よーーーっす!!!」 そう元気いっぱいに現れたのは、夜の飲み会…

彼女のヘッドフォン ③

それは突然のことだった。 クリスマスの2日前。 「え?」 「は?」 そんな声が飛び交う軽音部の部室。 主にそんな声を出したのは俺ら2年で、1年は何のことだとポカンとしている。 告げたのは引退した前部長。 「カイトが帰ってきたんだよ」 もう一度、同…

彼女のヘッドフォン ②

「……なんでひまりにあんなこと聞いたわけ」 今日のすべての授業が終わり、久しぶりに部室でベースに触れていると早瀬が声をかけてきた。 「おお、おつかれ」 「いやいやそれ質問の答えになってないから」 呆れた顔をした早瀬。 こいつは1年の頃から俺がひま…

彼女のヘッドフォン ①

彼女は今も赤いヘッドフォンをして、 ヤツの帰りを待っている。 着席している友人の後ろの席にドサッと荷物を下ろすとギョッと目を見開かれた。 「安達!!!!!」 それに加えてデカイ声で名前を呼ばれてそれがキーンと頭に響いた。 「うっせーよ……そうだよ…

彼女のヘッドフォン

彼女の首元には―――赤いヘッドフォン。 原色に近い赤。ヤツが好きだった色だ。 『彼女のヘッドフォン』 彼女はまだ、ヤツに未練がある。 あらすじ 大学2年。好きな女の子は同じ軽音楽部の同期で、元カレから贈られたヘッドフォンを未だに愛用している子だ。 …

sss:標と決別

「別れよう」 記念日だった。 5年。 そんな淡々とした一言で、私の5年は散ってしまったのだ。 それに対してどんな返答をしたか、どのように荷物をまとめたのか、最後に彼がどんな表情をしていたのかまったく思い出せないまま、気づけば見知らぬ土地の見知…

sss:臨む

はあ、と息を吐き出すと、白く、可視化する。 僕が生きているという証拠。 駅前のコンビニで購入した温かいお茶を口に含み、他者から怪訝な視線を浴びぬうちに口元にマスクを戻す。 二月だ。昔の呼び名でいうと、如月。 センター試験という名から、共通テス…

こんやあお

こんにちは。 在住地が緊急事態宣言延長となり、本日有給でお休みをいただいております。 普段は会社員の、紺谷 青(こんや あお)です。 創作したいという思いはある、小ネタは浮かぶけど文章にできない…… ということで数年うだうだやっておりまして、心機…

ss:他校生に、恋してます。

結局はべた惚れなんだよ。 え?そうべた惚れ。 すっげぇ近い距離って 逆に手出せないんだよ。 左手には俺には似合いもしない薄桃の傘。 それの持ち主を迎えるために、黒い傘を差して持ち主が出てくるのを校門前のここで待っている次第。 降水確率10%、くも…

世界の中心には、彼女。

好きだと自覚したのは随分と前。 それからずっと、一歩前を歩く 彼女の隣を歩きたかった。 『世界の中心には、彼女。』 俺は今日も、 彼女の言葉に一喜一憂している。 - あらすじ これは子どもの憧れなんかじゃないーーー。中3男子と高1女子。幼馴染?腐れ…

ラブミー・ベイビー

結婚なんてしない。 キャリアを重ねて、役職に就いて、 私がお母さんを楽にさせてあげる。 「あら、母さんはそれよりも孫が楽しみよ」 MAGO 最愛の母からの言葉に、 年齢=彼氏なしのOLが婚活、いや母の孫活に励む。 「私と子どもつくって!!」 「いや…きみ…

ss:みっつのありがとう

ありがとう。 ありがとう。 ありがとう。 いちばんめは1年間ありがとう。 にばんめはあの日メールの返事をくれてありがとう。 さんばんめは、 「えっ送れなかった?」 「うん…」 素っ頓狂な声を上げる親友に目じりを下げる。 何しろわたしにいつもチャンス…

+2

最初はお兄ちゃんの友達。 それだけだった。 「千鶴、かわいくなったね」 けど日に日に彼のことが気になって。 「樹くんに可愛いって思ってもらいたいから!」 2歳差なんて、努力で埋めてやる!! 『+2』 - あらすじ 千鶴は兄の中学からの親友である樹に…

僕等の関係

ずっと好きだった。 いえなかったのは関係を壊したくなかったから。 ……そんなのは言い訳で、 本当は怖かったの。 『僕等の関係』 - あらすじ 莉奈は幼なじみの千尋に長年片想い。 幼なじみの関係を壊したくない、でも彼女になりたい。そんな迷いが生じている…

罰ゲームの嘘告白

これは宣戦布告と受け取ろう。 私の大好きなあなたへ、 最大の復讐。 『罰ゲームの嘘告白』 - あらすじ 真帆のクラスでは男子による“罰ゲームで嘘告白をする"という悪質なゲームが流行っていた。 学級委員長として真帆はリーダー格の木戸に対し、ある策を講…

ss:届け、届け。

小さな画面と睨めっこ。 こんなんでいいのかな。 ああ、もう分かんない。 何が正しい? 何が誤り? 「分かんないってば」 ずっと右手に握ってた携帯をベッドに放って、わたしも携帯の後を追うようにベッドに崩れる。 どんな文章だとメールが返ってくる? ど…

ss:いっぽんのいと

だ い き ら い あのソプラノが耳に響く。 この空間に彼女はそれだけ置いていなくなった。 最低なことをしたのだ、と自覚したのは彼女がこの場を去った後だった。 自分には彼女がそうなる行為をした覚えがない。 、なんて言えばまた彼女の逆鱗に触れたのだろ…

ss:midnight yell

あ。 ………まーた寝てるし。 教科書枕にしちゃって。 おいおい12時まで頑張るって決めたんじゃなかったの? おーきーろー! ……まったく。 新生活に疲れてんのは分かるけどさーあー? やんなきゃ困るのあなただよ! 明日当てられるんでしょ! 「………はっ!げ、寝…

ss:認めたくはなかった

「あ!おはよ、昨日ありがとな」 「ぜーんぜん。他にも私にできることがあったら言ってよ」 朝、下駄箱まで行くとちょうど靴を履き替えていた彼が声をかけてきた。 出席番号が近くて仲良くなった男友達。 そう、オトコトモダチ。 「今度ジュースでも奢る!そ…

そして彼女は笑うのだ

彼女の笑顔が好きだった。 彼女の力になりたかった。 彼女に笑ってほしかった。 『そして彼女は笑うのだ』 高校2年生、 順風満帆な俺と不登校の彼女。 - あらすじ 高校2年生の空はクラスや教師、所属するバスケ部内でも評判のいい生徒。1年時、同じクラスだ…

おとなごっこ

おとなになりたかった。 18歳になったばかりの夏、自分には足りないものばかりだった。 仕事、金、将来への安定性。 現実的なものばかりが足りなかった。 25歳になった。 仕事も金も、将来への安定性も、今は持ち合わせた。 今、あの頃に劣るのは、行動力と…

彼は恋愛対象外?

この日のことは覚えている。 今まで忘れたことはない。 私と彼の関係の、分岐点。 『彼は恋愛対象外?』 さて、男女の友情とやらは成立するのだろうか? - あらすじ 「さて、男女の友情とやらは成立するのだろうか?」 中学の同級生。男友達。分岐点は中学2…