ss:届け、届け。

 

 


小さな画面と睨めっこ。

 

こんなんでいいのかな。

 

ああ、もう分かんない。


何が正しい?


何が誤り?

 

 

「分かんないってば」

 

ずっと右手に握ってた携帯をベッドに放って、わたしも携帯の後を追うようにベッドに崩れる。

 


どんな文章だとメールが返ってくる?


どんな話だとメールを続けれる?

 


昨日の夜、友達が手に入れてくれた好きな人のメールアドレス。


わたしはそれに悩まされていた。

 


友達はわたしにアドを教えてもいい、という許可を本人からもらったらしい。


だから自然に送れる。


でもメールは好きなときに返事を返せるという利点もある分、返事が返ってこないという難点もある。

 


あーもう!


時間も遅いから、なんて言い訳している自分お願いだから消えて。


お膳立ては友達にしてもらった。


だからここからはわたしが動かなきゃ。


文はもう打ってある。


あとは真ん中のボタンを押すだけ。

 

 

 


届け、届け。

(親指に勇気をこめて)

 

 

 

 

メール受信音が部屋に鳴り響く。


どきまぎしながら開くとよろしくという文字にニコニコした絵文字がついていた。


頬が緩むのが自分でも分かりつつ、なんて返そうって思いながらボタンを押してたら、

返事が届くまでに考えていた話題のことなんてすっかり忘れてた。

 

 

 

 

 

 

ーーー

あんまり接点ない人ほど何てメールしようか分からなくなるんですよね。

好きな人ならなおのこと。

返事が返って来る、なんて確証はどこにもない。

だからこそ、返ってきたメールが貴重で消したくないんですよね。

……あ、喋りすぎた←

 

 

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初出 2012年

メールというのがもう時代を感じる(2020年)