2021-01-01から1年間の記事一覧

星が降り注ぐ午前2時 ④

<シオリ:今日時間ある?><ナオ:今日は厳しい>午前に送ったメッセージへの返事が来たのは13時を過ぎた頃だった。彼と私の関係は年の差があれども基本的に対等だ。敬語もない。車に乗せてもらうときも私は免許を持っていないからガソリン代を渡した。食…

星が降り注ぐ午前2時 ③

あー……目が覚める。ここが自分の部屋であることは間違いない。時刻を確認すれば9時50分。 大学まで徒歩7分という売り文句でこの学生マンションへの入居を決めた。今から支度すれば10時40分からの2限には時間を持て余すくらいには間に合う。 今日は…

星が降り注ぐ午前2時 ②

「なんだぁ?そのブサイクな顔」時刻は22時を回っていた。運転席に座る彼は私服。一度帰宅して着替えてくれたらしい。「今日小テストがあって疲れてるのー。また来週も別の授業に中間試験があるしー」だから、と理由を助手席で車内に流れるBGMを選曲しながら…

星が降り注ぐ午前2時 ①

女としてどうなんだ、っていう行動をしているのは分かっている。自覚している。そこまで堕ちてはいない。けれど、自覚をしているくせにその行動を続けている私は何とも悲しい人間だ。「げっ、今日小テストあるじゃん」グレーのリュックをおろして、ボルドー…

星が降り注ぐ午前2時

暗闇の中に響く布擦れ。聞いたことのない甘ったるい声。荒れる吐息。―――――ああ、今日もか。頭の隅っこでそんな思いがふと現れて、でも、すぐに消しゴムをかける。いいの。これでいいの。けじめをつける日は、もう決めているから。今はこの瞬間を求めるの。体…

彼女のヘッドフォン 【おまけ】

彼は、いつから私をトクベツだと感じていてくれていたのだろうか。 「ひまり、こっち」 「あー!あだっちゃん!!」 季節が巡るのは早いもので、気づけば4年生になっていた。 3月に就職活動も解禁され、学校にいる時間よりも説明会や選考のために企業に赴く…

彼女のヘッドフォン ④【完結】

12月24日。クリスマスイブ。 クリスマスライブ当日。 機材設営から自分たちでやる軽音部。 午前から集合して、午後4時まで好きなだけ演奏する。 そのライブに、カイト先輩は現れなくて。 「よーーーっす!!!」 そう元気いっぱいに現れたのは、夜の飲み会…

彼女のヘッドフォン ③

それは突然のことだった。 クリスマスの2日前。 「え?」 「は?」 そんな声が飛び交う軽音部の部室。 主にそんな声を出したのは俺ら2年で、1年は何のことだとポカンとしている。 告げたのは引退した前部長。 「カイトが帰ってきたんだよ」 もう一度、同…

彼女のヘッドフォン ②

「……なんでひまりにあんなこと聞いたわけ」 今日のすべての授業が終わり、久しぶりに部室でベースに触れていると早瀬が声をかけてきた。 「おお、おつかれ」 「いやいやそれ質問の答えになってないから」 呆れた顔をした早瀬。 こいつは1年の頃から俺がひま…

彼女のヘッドフォン ①

彼女は今も赤いヘッドフォンをして、 ヤツの帰りを待っている。 着席している友人の後ろの席にドサッと荷物を下ろすとギョッと目を見開かれた。 「安達!!!!!」 それに加えてデカイ声で名前を呼ばれてそれがキーンと頭に響いた。 「うっせーよ……そうだよ…

彼女のヘッドフォン

彼女の首元には―――赤いヘッドフォン。 原色に近い赤。ヤツが好きだった色だ。 『彼女のヘッドフォン』 彼女はまだ、ヤツに未練がある。 あらすじ 大学2年。好きな女の子は同じ軽音楽部の同期で、元カレから贈られたヘッドフォンを未だに愛用している子だ。 …

sss:標と決別

「別れよう」 記念日だった。 5年。 そんな淡々とした一言で、私の5年は散ってしまったのだ。 それに対してどんな返答をしたか、どのように荷物をまとめたのか、最後に彼がどんな表情をしていたのかまったく思い出せないまま、気づけば見知らぬ土地の見知…

sss:臨む

はあ、と息を吐き出すと、白く、可視化する。 僕が生きているという証拠。 駅前のコンビニで購入した温かいお茶を口に含み、他者から怪訝な視線を浴びぬうちに口元にマスクを戻す。 二月だ。昔の呼び名でいうと、如月。 センター試験という名から、共通テス…

こんやあお

こんにちは。 在住地が緊急事態宣言延長となり、本日有給でお休みをいただいております。 普段は会社員の、紺谷 青(こんや あお)です。 創作したいという思いはある、小ネタは浮かぶけど文章にできない…… ということで数年うだうだやっておりまして、心機…